電子書籍状況の個人的まとめ

2011-12-03 電子書籍

電子書籍に関して、いろいろ調べて読む環境を整えたのでまとめ。

【英語の技術書】
O’Reillyがオンラインでの電子書籍に力を入れていて、PCから購入すれば大体定価の半額くらいでPDFやepubなどの複合フォーマットが手に入る。ほとんどの書籍が電子化されている。
iOSからならアプリ(epub抜き出し可)が低価格で購入可能、androidからならapk(ほとんどの場合epubエクスポート機能がついてる、ついてなくても作成ツールを作ってくれた人がいる)がさらに低価格で購入可能。
ちなみに邦訳が12,600円するUnixパワーツールは原書ペーパーバックのUnix Power Toolsで5,480円、電子書籍だとapkやらPDFやらepubやら全部込みで$55.99≒4,500円(ただしクーポン使えばたいてい半額なので2,250円)、App Storeだと600円、Android Marketだと413円。
邦訳にかかるコストや流通経費、形式の違いがあるとはいえ、邦訳を新本で買うのとAndroidマーケットで原書を買うのとで、30倍も値段が違うというのはどういうことなんでしょうか……

他にも、Apressもほとんどの書籍が電子化されているようです。
こちらもPDFやepubなどの複合形式で購入でき、また日替わりセールで$10で購入できる書籍があったりします。

また、Safari Books OnlineではO’ReillyやApressを含む、膨大な量の書籍が月極価格で参照できます。 $42.99/monthのプランと$27.99/monthのプランが有るみたいで、後者は月10冊までしか参照できないなどの制限があるみたいですが、色々な技術をリファレンスしたい人にとっては最適でしょうか。
さすがにちょっと高いので、自分はパスですが。

【英語雑誌・小説】
もはやAmazon Kindle Storeの一人勝ち感が漂っています。
知らなかったけれどパブリックドメインの書籍も結構揃ってるし、PCからのクラウドリーダーやiOSアプリ・Android用アプリもあるし、新聞や週刊誌から小説まで膨大な量と種類の書籍が揃っています。
しかも(O’Reillyみたいな自社でセールしてるところは除いて)普通に買うより安いものが多い。
特に新聞や雑誌で顕著で、Timeが$3/monthだったり英語版の毎日新聞が$10/monthだったりします。
一部いくらだよ。
まぁ雑誌なんかは写真や組版の取り扱いで読みにくかったりするかもしれませんし、有名所は日本でも流通してるので古本のほうが安く、かといってあんまり有名じゃないとKindleにもなかったり、あっても高かったりしますが。

【日本の電子書籍】
こと日本においては、どうにも電子書籍の普及が遅れているようです。
例えばO’Reilly Japanでも電子書籍の販売はありますが、価格は普通の書籍と変わらず形式はPDFのみ、セールなどもあまり行われていないようです。
これでもDRMフリーで一般的なPDF配信なだけマシで、日本の技術書で割と有名どころであろう日経BPは独自ストアでオンライン購読のみ、PCとAndroidでしか対応アプリがなくiOSでは不可、そしてやっぱり通常の書籍と同価格です。
どうにも、日本は電子書籍の著作権に厳しいらしく、それだけならまだしも書籍と内容が同じなのだから価格も同じにしよう、という風潮があるような気がします。
ユーザーからすると、電子書籍に求めるのはいつでも読める(どこからでもクラウドで読めたり、環境にかかわらずマルチフォーマットで読めたり)する部分でしょうが、著作権対応を独自ストアなんかでやられるおかげでそのストアの制約に縛られるわけです。
しかも、コレクター気質なのかわかりませんが一般的には「データ<現物」なイメージを持つ人が多いわけで、いくら同じ情報量を持つ媒体であろうと実物がないんだからその分安くあって欲しい、と思う人は、同じ値段で電子書籍を買うなら手元に置いておきたい、となってしまうんじゃないかと。
ま、憶測ですし、まだまだ発展途上な分野だということでもあるんですが。

事情はよく知りませんがAmazonは日本ではKindleを展開していないため、電子書籍ポータルはわりと色々見かけます。
後述する端末ごとのポータルや、先ほど挙げた出版社独自のストア、androidやiOS向けの電子書籍、などなど……
一つ一つ挙げているとキリがないですが、面白そうなところとしては角川のBOOK☆WALKERでしょうか。
ファミ通・富士見・電撃など、あまり電子書籍に抵抗なさそうな層が、手軽に読みたいというニーズを持ってそうなラインナップ(憶測と偏見)。
そして、電子書籍にコメントを付けられるというニコニコとの提携。
これは面白い。何が面白いって、「電子書籍じゃないとできないこと」をしてるのが面白い。
先ほど「Amazon Kindleの一人勝ち」なんて書きましたが、要は実書籍よりもメリットがあって、欲しい物があれば売れるわけです。
メリットはユビキタスな環境であったり、価格だったりするわけですが、この場合「感想をダイレクトに共有する」という、電子書籍じゃないとできないことを押し出してるわけです。
環境は文庫を1冊持ち歩けばいい、という人には響かなかったり、価格は古本に負けたりするわけですが、ネット越しにリアルタイムで感想を共有する、なんてのは明らかに電子媒体じゃないと無理です。
よく、「あの本面白かったよね」みたいなトークで盛り上がりますが、これはその更に上、「ここ面白いね」というのを共有できるわけです。
要は、友達と一緒に漫画を読んだりしてる感覚をネットで出来る。これは凄い。
なんかベタ褒めになってますが、現状ものすごく便利というわけではなく、インターフェースが微妙に使いづらかったり、コメント表示をデフォルトに出来なかったり、コメントがほとんどついてなくて普通の電子書籍と変わらなかったりと、いろいろ課題はありそうです。
が、少なくとも電子書籍の戦略で「面白い」と思ったのはこれが初めてなので、ぜひとも成長して行って欲しいコミュニティです。

【端末について】
書籍をPCでしか読めないと不便なので、やはり電子書籍端末は欲しいところ。
有名所だとAmazon Kindleですね。
ちなみにKindleはなぜかAmazon.co.jpでは取り扱う気配がありません。Amazon.comに頼むなり代行業者に頼むなりする必要があります。
日本だと、iOSやAndroidなど、汎用端末の方が優勢な気がします。専用端末ではSONY ReaderやPanasonic PB1辺りですか。
勘違いしてたんですが、Rabooは端末ではなく楽天の電子書籍サービス名なんですね。
日本であまり有名でないところだと、NOOKやKobo辺り。
Rabooが端末名でないなら、楽天がKoboを買収した以上Kobo端末を日本に展開してくる可能性は高いかもしれません。

ちなみに端末は専用端末か汎用端末かで分類でき、専用端末は更に液晶と電子ペーパーに分かれます。
正確に言えば電子ペーパーの汎用端末もありうるんでしょうが、今のところ見た事ないためこの分類で。
で、日本では専用端末より汎用端末の方が多いようです。みんなこぞってiPadを持ち上げて、それにAndroidが対抗してる感じ。
たまーにKindleの話題を聞きますが、SONY ReaderやPB1、Koboは調べてて初めて存在を知りました。
個人的には書籍を読むなら目の疲れにくい電子ペーパーがいいんですが、どうにも日本では少数派ですねぇ……

端末の選びどころは電子ペーパーか否かなどの端末仕様だけではなく、端末ごとのストアの使い勝手も重要です。
Kindleは前述のとおり英語書籍が多様な品揃えですが、日本語を読みたいならSONYのReader Storeの方が充実していそう、とか。
困ったことに、Reader端末からKindle Storeにアクセス、なんてことは出来なさそうです。
このへんもフォーマットが統一されて、どの端末からでもどのストアの書籍も読める、みたいになってくれると有りがたいですが……
版権やら囲い込みの関係で難しいんでしょうね。
ちなみにSONYはGoogleと組んでepubを推進しているみたいです。
そういやGoogle Booksを取り上げるのを忘れてましたが、どうにも使い勝手がよくなかったので自分はあまり使いませんでした。
どれがパブリックでどれがプレビューなのかいまいちわかりづらい……

【まとめ】
とりあえず現状では、技術書は頑張って英語を読んだほうが、選択肢の幅もコストも圧倒的に有利なようです。
自分はオライリーの書籍をandroidアプリ→epub→Ibis Reader、それ以外の書籍もepubでIbis Readerに突っ込んで、それとは別にローカルでの読書アプリも突っ込んでおく感じにしています。
クラウドはどこからでも読めて便利ですが、やはりローカルの方がサクサクなのでそこは使い分けで。
小説や雑誌はKindle Storeで購入して、AndroidやクラウドのKindleリーダーで購読。特にA Cristmas CarrolやThe Tale of Peter Rabbitといったパブリックドメインのものは、Kindleストアから買うと管理が非常に楽です。
問題はKindle以外の端末を購入した場合ですが……その時はその時考える、ということで。
日本の書籍はとりあえず保留。基本はまだ電子書籍に移行せず、必要なときは普通の書籍を買うと思います。
唯一青空文庫だけは便利なのでAndroidに専用の縦書きリーダーを導入して読んでいます。

以上、書けてないこともありそうですが大体のまとめです。
今の状態だと色んなアプリを使い分けていくことになるので、出来れば早いところフォーマットの統一と日本での電子書籍の普及がなされるといいですね。